引っ越しを決意するまで

17年間住居と職場を兼ねたお気に入りの借家に住んでいて、立地は自慢できるほどいい場所だし便利だし近所の状況もいいし、借家であることを除けば理想の家でした。

家主さんも大変いい方で、ある日売ってくれないかと打診したら快くOKの口約束をもらい、安心しきっていたわけです。
ところが、ありがちな話ですが家主の親族の内のひとりが猛反対をし始めたらしく、売ることができなくなったと申し訳なさそうに断ってこられたのです。

そういうわけで、気持ちは家を買うことに完全に傾いていたせいもあって、発作的に引っ越しを決意し、物件を血眼になって探し始めました。

物件を探し始める

何も考えずに近所で探しはじめたわけですが、さすが「立地は自慢できるほどいい」というこの土地柄、売っている物件の値段を見て腰を抜かします。想像を超えた高価格。
「駄目だ・・・」腰が抜けて立てません。
何という欲のない家主さんであったことでしょう。こんな土地の鉄筋3階建てをあんな値段で貸してくれていたとは。

これなら、引っ越しなどする必要がないではないか。しかし気持ちの傾きはもう元に戻りません。
自慢できる立地を諦めて、家探しです。

見つけた

仲介屋が紹介したS区の物件に興味を持って、それを一緒に見に行く約束をしたその日の朝一番に、HOME’Sに新しい物件が登録されたのを発見。

S区をキャンセルし、少し猶予をもらうことにしました。
見つけた物件は、O通りに面しており、現在の住居から2Kmしか離れておらず、鉄筋3F建てで1Fが喫茶。で、築27年かなりの破格。

「怪しい。この物件も怪しい。価格も怪しい」とまず怪しみました。「怪しい怪しい」と呟きながら、特定しにくい僅かな情報を頼りに、まずは私たち夫婦だけで物件の偵察へ。

「この辺か」「この辺よ」自動車をすりすりと動かしながら偵察。自分たちのほうがよほど怪しい。「あ。もしかして、あれか」そびえ立つ建物。「あれよ」
「すごいな」「すごいわ」

その建物を発見した私の第一印象「これに決まりだ」
しかし同時に妻は「これは駄目だ。やばすぎる」と思ったらしい。

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破れたテント、放置され生い茂った植物、入り口付近の造作は腐ってぼろぼろ、汚れた壁、これはかなりの怪物件。うずうずする。
しかし結局、正式な手続きを踏んで、内覧させてもらうことにした。

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最初の内覧

最初の内覧。
驚いたことに、ここに人が住んでいる。いやそんなことを言っては失礼です。誰しも、自分たちの暮らしを客観視できずにいるわけで、いきなり他人が見たら顔をしかめると言うこともあり得るのです。

内覧に立ち会ってくださったのは、可愛い赤ん坊をだいた可愛い奥さんで、人の良さそうな人でした。しかし、この家には何の愛着もない感じで、結構投げやり。
ははぁ。ここに嫁に来たわけだな、この家が嫌いなんだな。一刻も早く売っぱらって、その金を元手にマンションに引っ越したいのだな、と勝手にドラマを想像して、頭の中でこの家族の団らん風景などを思い浮かべたりしながら、鉄骨や壁などをチェック。
どういう部分をよく見ておくか、判っているはずなのにドキドキしてあたふたして、結局ちゃんと見たような見てないような、いい加減な状態のまま退散。

後で思い返しても、何を見てきたのか我ながら要領を得ない。
ただ、変な建物の造りで面白いと思ったことだけ覚えて帰った。
さて、家を売ろうとしている人は、内覧に向けての心構えが必要です。

まず、売りに出すに当たって、家を綺麗に片づけましょう。
できれば綺麗に掃除しておきましょう。
印象を良くするために、風も通しておきましょう。
見に行く側の心構えは、・・・・・・・・・・ちゃんと見るべきところを見ましょう。

決定の条件

物件購入の条件は、思っている通りの全面改装が出来るかどうかです。物理的にも予算的にもです。
そこで、最終的な結論を出す前に、改装のための条件を書き出して可能かどうかをチェックします。
現状の間取りはこうなっていまして、何と言っても屋上が魅力的。問題は間取りの大がかりな変更です。
現状図面
まずは、全解体が可能かどうか。
鉄骨造りとは言え、間取りの柱や壁が撤去不可能な可能性もあり、最初にチェックすべき項目です。これが駄目だったらこの物件はいりません。
次に、2階~3階の建物中央の階段、これを撤去可能かどうか。階段を撤去し、設計を最初から構築出来るかどうかもポイント。この条件も外しがたい。
水回りの移設も重要なポイントです。特に2階のトイレの位置は現状許容できる位置ではないため、必須項目となります。
その他、1階の厨房解体や給排水設備の交換など、とりあえず現実的に工事可能かどうかを工事屋さんに尋ねたところ可能であるとの判断。
予算的にも目玉の飛び出る価格はないだろうとのことで、大雑把に見積もりを依頼して、この物件を大改装することが決定しました。

計画の概要

2007年3月。ざっくりの計画段階。最初の構想です。

このときには、まだ実際の建物の細かな状態をちゃんと把握していないために、プランとしての詰めが甘いのです。
そこで、やらねばならぬことも含めて箇条書きにしてみたわけで、購入検討中の最初のプランメモです。
とにかく安く改装することを目指しているので、書きだしたものの実現可能かどうかはまだ未知の状態、寸法の怪しい間取り図を睨みながら構想を練ります。
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■事前準備
・屋上芝生、物置、店舗エアコン等の設備撤去について
・解体について – 解体費用の見積もり

■階段室(建物の西側にある階段はビルの階段室のような作りなのでこう名付けた)
・天井裏確認、場合により解体
・クッションフロア除去
・壁面のざらつきをどうするか – パテ、壁材、研磨、その他の可能性
・井戸 - 調査必要
(そう。階段室の1階の奥に、井戸ポンプを発見したのです)

■1F
・厨房、店舗設備の撤去、クッションフロア剥離
・床レベル - 左官依頼
(厨房部分と客席の床レベルが異なっている)
・電気設備
全部やり直し、機器全変更
・天井解体、天井裏点検
・壁面解体、造作、仕上げ
・表通りに面した部分の全解体、入り口、建具、表面の作り直し
・道路に面した部分の勾配工事
・トイレ、洗面の交換
・給排水管交換
・ガス管撤去
・入り口2のサッシ交換

■2F
・間取り全変更(1フロアにする)
・天井解体、新造作
・壁面 - 既存壁面を残すか解体するか・・
・トイレ移設、洗面、バスは交換
・照明等電気設備の計画

■3F
・トイレと押し入れを残す可能性大(後に変更した)
・間取り変更
・壁を残し、クロスまたは塗装をし直す(後に変更した)
・電気設備
・天井解体、新造作

■屋上
・防水
・サビ落とし、鉄部再塗装
・亀裂処理

■外壁
・外壁塗装
大雑把ながら、やること多すぎて眩暈がします。

内装図面

2007年3月。まだ購入の意志を伝えていない段階で内装のプランを練り始める。
改装計画においてすでに決定していることは以下の通り。

1.設計は俺がやる
2.工事は超短期間・低価格でやる
2-1 超安い工事屋さんに頼む
2-2 超安くない場合、出来る工事は俺がやる
3.仕上げ工事は俺がやる
4.キッチン、トイレ、洗面、給排水設備は全て一新する(発注)
5.電気配線、設備は全て一新する(発注)

そこで、設計を開始するわけです。どう考えても、素人のなんちゃって図面です。

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中央の階段を撤去する方向
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中央の階段を撤去しない方向

 

この時点でのポイントは、2階から3階にかけての、中央の階段部分を撤去しない方向を検討している点と、水回り設備移設の可能性。

大きなコストがかかると考え、現状を維持する方向を模索している状況です。
後になって思い返せば、そんな箇所より、より大きなコストがかかる場所について考えが及んでいないのが滑稽でもあります。つまり、外壁の修理や建具、仕上げ工事です。

まあとにかく、この時点では「階段を残す場合どうか」「トイレや水回りを移設するのは難しいのか」と言った事ばかり考えてます。
住居スペースとなる2階と3階については悩みに悩んでいます。

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2階のプランいろいろ

 

悩んでいると言うより、どう見ても楽しんでます。

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3階のプランいろいろ

 

階段と水回り以外に「壊す壁を最小限にするにはどうすべきか」と考えている節があります。
これも後になって滑稽であることが明らかになります。
つまり、解体屋さんに対して「ここは残して」「この線まで壊して」と、細かく指定すればするほど、解体に時間がかかり、仕事に丁寧さを求め、結果より高くつくわけです。
「全部やっちまって」と頼めば、1日で全部破壊してくれるんです。
ただしその後作るのが大変になりますが・・・

次の内覧

再び内覧に赴くことに。
すでに物件の吟味ではなく、改造計画を立てるための下見。仲介屋の紹介による大工を連れて、壁の向こう側や床のその下、天井のその上など見えない基礎部分を確認。

どこまで壊し、どこまで現状で使用するのかを考えるための下見なので、キッチンの換気扇がどれほど汚れていようが、水回りが不安だろうが気にも止めない。
ただ、1F店舗設備や屋上のどろどろ植物など、撤去してもらう分は撤去してもらわないといけないのでそういったところを重点的に見る。

そしてさらに重要なのは寸法。
もうすでに工事業者のようにあちこちの寸法を測りまくりです。
それでも、後になって抜けているところが大量に出てきました。そんなもんでしょう。

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屋上の惨状。もはやジャングルの湿地帯状態。足を踏み入れることが出来なかった。

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屋上の物置。朽ちており、使用不能っぽい。

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1階店舗部分。営業しておらずゴミ置き場。しかし内装は結構良い。渋い。昭和のスナック喫茶ナイス。ダウンライトがたくさんあって、後にこれを全部廃棄してしまったのですが、未だに惜しいことをしたと思っています。

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カウンター内。ここは床が一段低くなっており、排水溝などもある。このカウンターを壊すのは惜しい。でも壊して床を揃える予定。

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厨房奥。営業をやめているはずなのに、色々残っている。これはヤバい。

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3階の様子。土壁は傷んでいるが悪くない作り。予算が惜しいので、このあたりは修繕で済ますかもしれない(後に変更したが)

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「階段室」と名付けた独立した階段スペース。どうやら、建築当初の図面ではここは外部であったらしい。モルタル吹きつけによる壁の造作も外部っぽい。かっこいい。

買い物にわくわく

図面や工事の計画と同時に、新規で設置する各設備について調べ始めます。
即ちキッチンやバス、トイレに洗面、サッシなど建具、他の設備や什器などについてです。

これまで、そういった方面に全く興味がなかったので無知中の無知、だから何を調べても新たな発見があり面白くてこんな世界があったのかとわくわくします。
同時に、その価格にも初めて触れて、高いとは思っていたがほんとに高いなあと実感。

1階の表通りに面したところは大きな出窓の作りになっていて、予定ではこれをぶち壊し、大きな入り口を設けて自動車が入るくらいにしたいと目論んでいました。
それで、その大きな入り口として、店舗でよくある、サッシの折り戸をつけたいな、と。

色々調べ上げた結果、トステムのラクタスというシリーズがなかなかいい感じ。これいいなこれいいなと唄いながら値段や工事代金を調べると、当たり前ですが立派な立派な価格です。
この時点ではまだ諦めておらず、他の工事代が安ければこれにしよう、と、半ば決定してわくわくです。
1Fの店舗が画廊にもできそうなお洒落なアトリエになる予感。うふふふふ。

まあ、現実はとても厳しいのでそういう夢は砕け散るわけですが、設備の選定は楽しいひとときで、まさに夢中になります。
住居スペースに必須の水回り設備についてはさらに夫婦でわくわくです。

キッチンメーカーのサイトを見て回り、あれがいいなこれがいいなと、ハイカラなデザインや細かなギミックに大興奮です。
「パタパタくん最高」「降りてくる吊り戸棚べんりそう」「今時のデザインはかっこいいなあ」などとはしゃぎます。もうほとんどアホです。
そのうちにショールームというものがあると知り、毎週見に行くようになりますが、そうするとだんだん慣れてきて、最初とは印象が変わってきます。
しつこく見に行って、しつこく調べ上げ、しつこく悩むことは重要です。
そのうち「パタパタ?あほちゃうか」「馬鹿馬鹿しい。小手先のギミックに騙されたら駄目ね」「またこのデザインか、こればっかりだな。センスないな」「安っぽいねえ」
・・・・まことに身勝手なものです。

幸運とは、業者に知人がいることである

計画段階では、塗装・仕上げ会社と解体業者の友人たちにそれとなく打診しておきました。
職人が暇なときでいいから、日当程度の値段で手伝って~という感じです。

この2社の友人がいなければ、最初からリノベーションは考えなかったかもしれません。
特に解体業の友人など普通の人にはいないでしょう?これは助かりましたよ。

そして、仕上げ会社の社長の紹介で、各業種の職人や親方と知り合うことが出来て、リフォームにおける最大の懸案事項「工務店との折衝」がなくなったわけです。

DIY+アルファでのリノベーション工事は、友人たちの心強い支えがあって初めて実現の可能性が高まりました。

ただし工務店に依頼しないことによって、価格の安さと引き替えに大きな責任を背負い込むことになります。即ち「工事日程の段取り」「材料の支給」「工程管理」「現場の監督」「依頼作業以外の全ての現場作業を自前でやる」などです。

つまり自分が工務店になったわけです。
DIYでひとり工事を進行しつつ、図面の修正をやりつつ、10時と3時にジュースを買いに走りつつ、現場監督をやりつつ、資材運びを手伝いつつ、指示したり設備メーカーと連絡を取りあったり、床に墨出しをやったりするわけです。

まずは知ることから

 

4月から6月にかけての3ヶ月間弱、キッチンメーカーというものを知り、キッチンやユニットバスという商品を知り、ショールームというものがあると知り、我々夫婦は無知100%からいっぱしのマニアへと変貌を遂げることになりました。

さて最初に軽く検索してみたら色々なメーカーサイトがヒットするわけですが、型番表記のルールもわからず、シリーズ名を見ても何の事やら判らず、サイズの決まり事も知らず、まったくのチンプンカンプンでした。

「ユニットバスって知ってる?」
「知らん」
「風呂部屋ごとセットになった風呂キットやで」
「ほほう便利なもんがおますなあ」

「ユニットバスの単位知ってるか?」
「知らん」
「1坪用とか、そういう規格サイズらしいわ」
「ほほう分かりやすおまんなあ」

「人工大理石って流行ってるらしいなあ」
「なにそれ。人工で石作るんか」
「よく読んだらただの堅いプラスチックやでこれ」
「ほんならいらんわ」

「今時のトイレって節水型らしいな」
「ほほう今時やね」
「シャワートイレ憧れやなあ」
「いやや。気持ち悪い」

「キッチンってどうなってんの」
「このシートにチェックしていったらいいのや。部品を選ぶんや。Macの買い方と同じやで」
「チェックしたで」
「なになに。総額180万円也か。ふーん安いな・・・安ないわっ。やり直しっ」

「キッチンや風呂って定価高いけど、実売は半額以下みたいやで」
「うわほんまや。安っ」
「これこれ。それに騙されてはいかん。よう見てみ。それでもまだ高いで」
「ただの安っぽい家具やのにな」
「タカラは定価安いけど値引きがあんまりないから結果いっしょやな」
「トーヨーキッチンもそうやな」
「だから中間業者が扱いにくそうにするんやな」
「知恵やな」

「ミカドやっすいなあ」
「値引きしすぎやろ」
「でもこの表面塗装見てみ、これアホみたいな仕上げやで」
「上等の仕上げを選んだら値段跳ね上がるなあ」
「知恵やなあ」

「トーヨーキッチン見てみい、一番安いモデルでも、他のメーカーの中の上くらいの表面処理やで」
「形もカッコいいな」
「やっぱりトーヨーキッチンに決めようか」
「シンクがでかすぎていやや」
「このでかさは男受けするサイズやな。その証拠にトーヨーキッチンの広告見てみい、台所に立ってるの、髭のおっさんやで」
「ほほう」
「知恵やな」

メーカー比較

最初は何が何やら判らない状態でメーカーサイトを訪問し、矢継ぎ早にカタログを申請、手に入れます。こんなところです。

サンウェーブ
ミカド
タカラ
クリナップ
トステム
TOTO
INAX
トーヨーキッチン

最初は意味不明だったものが、調べていくといろいろと見えてきます。

例えば、単に色の違いだと思っていたものが実は表面処理そのものの差で、これが一番価格の幅が広いということや、蛇口やコンロ、レンジフードといった付属品は専門メーカーのOEMで、どれを標準に組み込むかがメーカーの判断であるとかいったことです。

最初は大はしゃぎで喜んでいたパタパタくんや降りてくる吊り戸棚などのギミックには、そのうち本当に興味を失ってしまい、シンプルさだけを求めるようになってきます。

安さに釣られた普及価格帯の表面仕上げにもうんざりしてきました。カラーボックスかよという仕上げは受け付けません。

さて色々調べていくうちに、各社の特徴を掴んできました。あくまで勝手な判断ですが。

サンウェーブ

良くも悪くも標準的なキッチン。
包丁入れや小物入れがパタパタしたり、降りてくる吊り戸棚の水平位置を保ったり、面白いギミックに力を入れています。
若奥さんが「わー何これ。これいい。これほしい」と思わず叫んでしまう元気主婦ターゲット。
デザインも庶民的で厭味なし。
バスにはあまり力を入れてなさそう。

ミカド

良くも悪くも普通なキッチン。パタパタするギミックを採用したり、シンプルなデザインを採用したり、最安値の安物から高級仕上げの上等品までそつなくラインナップ。
バスもそこそこ。とにかくそこそこ。実売価格の安さを考えると、デザインコストを下げて安値提供を目指しているのかなと感じます。

タカラ

キッチンもバスも自慢のホーローが特徴。強い。保温力がある。その自信たるや凄まじいものがあります。
定価を下げて実売価格との差をなくそうとしている姿勢は評価できます。
デザインは悪く言えば昭和風といいましょうか、ワンポイントの柄が入っていたりして、それなりに味わい深いです。

クリナップ

クリナップは昨今の新しいキッチンの流れを作ったと言っても過言ではない提案型のメーカー。ステンレスに拘った作りも技ありという感じです。技術と提案。良い企業です。

トステム

サッシメーカー大手のトステム、キッチンなんかも作ってます。商品力に強さを感じますが、ここも何やらそつなく売ってやろうというラインナップで、際だった特徴が見つけにくいのも事実。ややクール系の標準的な要望にはすべて応えられますという百貨店的なイメージを持ちました。

TOTO

油断していたらTOTOのデザインはいいですね。キッチンも、バスも、洗面もカッコいいです。素材感にも力を入れていて、安物のカラーボックス仕上げみたいなのはありません。普及価格帯キッチンの表面仕上げはマット仕上げです。これはいいです。
レンジフードの選択もいい。富士工業のわりといいやつを標準に組み込んでます。TOTOは強気です。

INAX

INAXはTOTOよりやや敷居を下げた感じで、中途半端と言えば中途半端ですが、それでもブランド力は維持出来ているように感じます。ユニットバスに「くるりんポイ」という排水に渦を発生させる機能を採用、これはギミックものというより、一工夫という感じで大変魅力的です。この仕組みは他社でも採用していますが、全面に押し出していてやる気満々です。

トーヨーキッチン

トーヨーキッチンはデザイナーズハウスでの採用は基本。もっともお洒落でカッコいいキッチンブランドです。かっこ良すぎて問答無用です。こだわりのキッチンであるならば文句なしに採用でしょう。
以上、あくまでも個人的な見解です。メーカーの皆様どうもすいません。
他にもメーカーは沢山ありますが、あまりよく調べなかったので。どうもすいません。

ショールーム

毎日昼間に検索して調べ物、夜に報告、週末毎にショールームを訪れるルーチンワークが定着しました。
ショールームで大事なのは、現物の商品もそうですがやはりお姉さんの接客態度です。

サンウェーブ

初めてショールームと言うところに出向いたのはサンウェーブ。パタパタくんや引き出し式のキッチンを見て興奮する我々にお姉さんも釣られて楽しそうです。そういうギミックが得意そうです。
お姉さん80点。テキパキしていて美人すぎず「キッチンは自信ありですけどバスは・・そのぅ、まぁ」と正直なところも大変よろしい。何でも気軽に質問できました。

ミカド

ミカドのショールームはシンプルなショールームでした。まさにただの展示場。お姉さんはひたすら事務的で丁寧。表面処理のサンプルも、重いのに次から次へ持ってきてくれました。申し訳ないんですがミカドの商品にはあまり特徴がなくて、他で見たような機能がちらほらと採用されています。定価は別として、実売価格を見るに、とにかく安く出そうという姿勢が感じられます。

タカラ

タカラのショールームは最強です。お姉さんも最強です。親しみのある快活なお嬢さんが、タカラのホーロー自慢の演出のため、商品を殴るわものを叩きつけるわ足で蹴飛ばすわバーナーであぶるわと、そのパフォーマンスと元気な声に圧倒されます。そして自社に対する愛情と自社製品に対する自信が偽りなくお姉さんから伝わります。タカラのお姉さん100点。
帰るときはこちらのほうが深々とお礼を申し上げたほどです。

クリナップ

クリナップのキッチンには敬意を表していたのですが、忙しくてショールーム見学をゆっくりできませんでした。こちらのせいなので採点なし。すいません。

トステム

トステムに出向きましたが、お姉さんもお兄さんも客を無視、何か尋ねようかという気も起きませんでした。やる気なし。0点。商品は気になっていましたがそれ以降調査の対象から外しました。

TOTO

TOTOのショールームは洒落ていて、ブランド志向を打ち出していました。商品もいいです。貫禄といったところでしょうか。
キッチンの表面処理もTOTOは特殊です。
他のメーカーの普及価格帯の最安値の仕上げはカラーボックス仕立てですが、TOTOのは一番安い価格帯でもエンボスの入ったマット仕上げです。この感じを採用しているのはTOTOとトーヨーキッチンでした。これは素晴らしい。
担当のお姉さんは大変頭の良い人で、飲み込みが早いしこちらの希望を元にした提案も的確だし、職業人として尊敬できる人でした。これはTOTO的には大当たりの逸材でしょう。私も頭の良い人が好きなので高得点90点。

INAX

TOTOの近くにあるINAXのショールームは、色んな意味でTOTOと比較されるでしょうが頑張ってます。洒落た展示をしていますが事務カウンターには書類が山積みだったり、いい意味でビジネスライク。
そしてここのお姉さんはすごいです。色っぽいです。艶めかしいばかりの仕草と語り口です。説明を聞いていても、内容は全く伝わらずお姉さんに見とれます。まるで個人開業医で王様気取りの歯科医の美人助手のようです。
ショールームを出て、たっぷり聞いた商品説明を何一つ覚えていないことに気づきました。お姉さん採点不能。

トーヨーキッチン

カッコいいキッチンとの相乗効果、このショールームはどこのブランドショップですか美術品展示場ですか。
予想通りの洒落たショールーム、賢そうなお姉さんもいます。でも厭味な感じはまったくなく親し気です。もともと、ただのお洒落ブランドじゃなくてステンレスの技術系だから、ブランドにも力があり、従業員の質もいいのかもしれません。
しかしそんな中、最大のカッコ悪いところを発見。格好良くレイアウトされたパソコン上でのシミュレーション設備ですが、当然トーヨーキッチン的にはMacでしょうよ。せめてもうちょっとカッコいいパソコンとかモニタを置いて欲しかった。
話はそれますが、他のメーカーもほとんど全て、web上のパーツ組み合わせシミュレーターが全てMacで動きません。これは各メーカーのサイト担当部署馬鹿すぎ。きっと捏造調査でおなじみの大手リサーチ会社の「Macユーザーは2、3%、無視して良い」とかっていう虚偽報告を鵜呑みにしてサイトを作ったんでしょう。あの報告嘘なのに。
話がそれて申し訳ありません。えっと。
まあトーヨーキッチンはカッコいいです。もうそれしか言えない。
キッチンを調べて3ヶ月目には、我々は9割以上トーヨーキッチンに決めていたのであります。
ところで調査の後半、住まいのショールーム★調査隊というサイトを知って、大いに参考にさせていただきました。

キッチン決定

ユニットバスは「くるりんポイ」に速攻決めたので、あとはその中で最もシンプルなものにしよう、余計なものは標準機能だったとしても外してもらおう、ということでINAXのくるりんポイ仕様ルキナというモデルに決定。サーモフロアという冷たくならない床の仕様もお気に入り。

掴む棒とか大きな鏡とか小物入れとか内壁のツートンカラーといった標準で付いている余計なものを全部外したら見積もりが随分と安くなりました。

問題のキッチンは、吟味に吟味を重ねていくつかを選定、候補に残ったのはトーヨーキッチンのポルトとTOTOのレガセスでした。

トーヨーキッチンのポルトはMacでいうとiMacですね。なんか安いし、万能で廉価のモデルです。

2007年のポルトは現在(2009)のポルトより随分とデザインが良かった。ラインの揃い具合が素晴らしい。深いシンク、ダブル水栓、そして足、渋い色。もうほぼ決定です。

弱点はでかすぎるレンジフードで、ですからこれを選択から外し、単独他で購入しよう、ということまで計画しました。
レンジフードはキッチンメーカーにOEM供給している富士工業のスリムなカッコいいやつを選定、これをどこで安く買うかというところまで計画は進みます。

ポルトの図.gif

次点のTOTOレガセスは、表面処理がトーヨーキッチンと並んで質が良かったのと、富士工業のちょうど購入予定のレンジフードが標準装備だったことで一気に高得点。

さて結果を申し上げますとTOTOになりました。その経緯はこうです。

数年前に家を購入した友人がいまして、その時設置されていたガスコンロをIHに変更し、ガスコンロが新品のまま余っている。それを貰えることになりました。

キッチンメーカーのオプションで選ぶと割と高額な部類のガスコンロで、両面焼きで水が要らないグリルが付いたガラストップの上等なやつです。
「呉れ呉れ」ということで貰いに行きまして、そのままトーヨーキッチンに行って「ガスコンロがあるので、ガスコンロを外したセットをひとつくださいな」と言うと「ガスコンロなしは駄目です。どうしても貰ったガスコンロを使いたければ、ご自分で外して付け替えてください」と言うではありませんか。

おお。これはMacでいうと「iMacくださいな。でもHDDは自分のを付けるのでHDDなしでお願いします」「それは出来ませぬ」てのと同じ事ですね。

すごすごと諦め、TOTOへ出向きます。例の頭の良い素晴らしいお姉さんに「ガスコンロを貰ったんでガスコンロなしで買えますか」「もちろんです。形が合うかどうか確認しますね。ガスコンロの型番は、ふむふむ、これなら取り付けられます」「決定。じゃ、キッチン1個くださいな」

というわけでお客本意の素晴らしいサービスでTOTOの圧勝。

かっこいいトーヨーキッチンを諦め、夫婦で悪態をつきながら帰途に向かいます。

「ふん。キッチンの形なんてどうでもいいわ」「普通のでええわ」
「TOTOも悪くないもんね」「TOTOのサービスを見習いやがれ」
「トーヨーキッチンめお高くとまりやがって」「アップルの真似してもだめだめ」

あきらかに負け惜しみです。

さておまけの話ですが、ガスコンロをくれた友人には洗面化粧台も頂きました。ありがたやありがたや。



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購入までの雑多な事件

さてそんなこんなで購入を決めようかどうしようかよし決めたよし決定っ、とか言ってる隙に、他の誰かが手付けを打ったらしいと仲介屋から連絡が入りました。
ショックでひっくり返りましたがこれがご縁というものか。
またあの不動産物色サイトで物件を探す毎日が復活しました。しかし若干気が抜けたのも事実。
半ばヤケクソで、少々遠い立地や近場だけども狭苦しい建物などをチェックして回ります。それなりに笑える物件ばかりでちょっと楽しんでたりしたわけですが、これという物件には出会えません。

そんなある日、仲介屋から電話が入り「先約が流れた」と。
ご縁は確かにあった。しかし、より大きなご縁のなさが立ちはだかります。
つまり先約者がなぜキャンセルしたのか、それは融資の問題です。
ならば、同じ問題が我々に降りかかるのも自明。

この中古物件、あろうことか建坪率95%、容積率300%を誇るやっちまった系の物件でありまして、数年前から各銀行には政府からの厳しいお達しが届いており、曰く「そういう中古物件に融資するべからず」

というわけで、5年前なら問題なかったのですがそのお達しはすでに都市銀行に行きわたっており、制度系、都市銀系からの融資は絶望的状況になっていたのであります。

さてここからは、中古物件購入を考えておられる私同様社会不適合的自営業・自由業の皆様が一番気になる資金繰りや融資の問題の話ですが、ここでくだくだ説明はできません。
必然という名の奇跡が起こったこともあり、懸案事項は解決されたという結論だけ記しておきましょう。

「やはりご縁がありましたね」と、こちら側の仲介屋、売り主側の仲介屋が口を揃えます。
そう。売り主側の仲介屋さんにも、我々の評判がよろしかったようなのです。
だから先約がモタモタしていたときにさっさとそちらを切り、こちらに注力してくれたわけです。
こういうところにも、人の情けと因果応報が発揮されたわけですね。
売り主側の仲介屋に好印象を持たれた件は、契約直後にも威力を発揮しました。

売り主側仲介屋さんの機転

契約は、あるがままの状態で購入、という形です。
しかし、こちらの条件では「すべて空にしておいてくださいね」です。
このとき、大きな設備についての摺り合わせを何もしていなかったので、以下の大物が残りました。
屋上に敷き詰められた人工芝、大きな物置、1階店舗部分の厨房設備(レンジフードやカウンター内の据え付け什器)、埋め込みの店舗用エアコン及びその室外機
などなど・・・
こちらの気分としては「どうせ解体屋さんに全部やってもらうから同じ事だ」と甘い認識をしていました。
売り主側の仲介屋さんの機転で、引き渡し直前にそれら大型設備を全て売り主負担で撤去してくれたのは、後になって本当に助かりました。
大型設備の解体、撤去とその廃棄処理には結構な費用がかかるんです。
好印象を得たことで、ありがたい対応を得た一つの例です。

1F正面をどうするか

1Fは店舗になっていて、ご覧の通り入り口と出窓になっています。
この出窓部分をぶち壊して、車が入れるような大きな入り口を作りたいわけですが、さてどうしましょう。
以前検討していた店舗用サッシ、トステムのラクタスはもうとっくに諦めています。

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とりあえずぶち壊して、折り戸を付けてみようという計画を進めます。

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出入り口のドアは生かし、折り戸計画を立ててみたわけですが、なんとも稚拙な図面です。

このときは「決定っ」と叫んだわけですが、これは後になってまた変更する事になりました。

 

図面(ほぼ)完成(に近い)

 

結局、購入の決定をしてから、駄目押しでもう一度測量をさせてもらいに伺いました。
曖昧な図面はすでに作っていたものの、改めて測り直すと細かいところが随分違っています。
やっと正確な図面が書けるときが来たと思ったら、間もなく契約、引き渡し、工事開始ですから、修正だけとはいえ、時間が足りません。でも頑張る。

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これが現状の正確な図面。

さてここから間取りの決定、解体箇所、設備詳細を作らねばなりません。
しかしそもそもまだ間取りで悩んでいる。
解体屋はもうじき来る。
さてどうしよう。えいっ。

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2Fプラン決定。

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3Fプラン決定・・・できない。二つのうちどちらかにしよう

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というわけで、当初の解体予定。
○が付いたところは残す。
青いところは、床が下がっていて左官で埋めなければならない箇所。
1階の下側も解体予定ながら、まだ解体した後どうするかぜんぜん決まっていないので保留。
なんとかここまで漕ぎ着けましたがまだなんか不安。

内装計画

そうこうしているうちに、契約が成立し、声をかけた色んな職人にも相談しながら、より具体的な内装計画の図面が出来上がりつつ。
この図面は実は工事が始まってから変更箇所が発生し書き直したものですが、まあ大筋では物件引き渡し直前にはこのように計画が具体的な形になってきたという感じです。
主に間取りを決定する内装計画。

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1Fは、トイレと棚を残しすっからかんにします。入り口ファサードの折り戸は、4枚折り戸+ドアの組み合わせになりました。折り戸だけでは、一枚あたりの戸が大きくなりすぎるという指摘を受けたからです。

残す棚はこんな感じで、喫茶のカウンター後ろにある据え付けのやつです。これ残しました。

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2Fも基本的にすっからかんにして、住環境用設備をこのように配置。キッチンと風呂の位置自体は変えず、窓や換気扇口を無駄にすることなく新設できる案配となりました。

3Fは途中で間取り変更があったものの、結局間取りを作るのを最小限に抑えたこの形になりました。この家にはトイレが3つもあります。トイレばかりです。
(しかし3Fのトイレは2009年夏現在、まだありません。トイレ予定地はちょっとした物入れと化しています)

この図面が完成するのに要した期間は、勉強時間も含めて4ヶ月。工務店さんにも「良くできている」と褒められた。
しかし結局、工務店に工事を発注することはなかったのでありました・・・

さて図面を描いたソフトはCADじゃありませんで、使い慣れたIllustratorです。
Illustratorのプラグインに、CADToolsというのがありまして、このプラグインのおかげで正確な図面がすらすらと書けます。すばらしい。最新版はバージョン6のようです。

 

電気の計画

電気工事は無資格者がやっちゃいけません。正しく電気屋さんに依頼します。
以前の家でもお世話になったことがあるN川電気さんに今回工事をお願いすることが決まってます。
そこで、電気設備の希望を伝えるわけですが、さあて困った。何をどう指定して良いのやら全く判らない。手当たり次第に検索し、勉強に励み、何とか希望を伝えられるような図面が書き上がりました。

ブックマークに残ってる知恵を授かったサイトは、ショーエイ電気さん、ハウジングナビ、超初心者による建築設備設計・管理業入門センターの記号説明コーナーを始め、多様なサイトさまたち。おかげさまで少しかしこになりました。

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N川電気さんはこの図を見て「ふんふん。わかりました。じゃ、一式でやりましょう設備機器は自分で勝手に買ってきてね。付けたげるから」
なんという奇特な電気屋さん。よし電気はOK。

しかしこの後、電気設備機器の選定でまた検索づくしの勉強まみれで知恵熱が発生したのであります。
照明機器、ダクト換気扇など、なんでどうしてあれほど種類が多いのですかっ。
メーカーサイトの設計用型番データベースを前に一瞬脳味噌がトコロテン状態になります。
もうわけがわかりません。トコロテンになった脳味噌をもみほぐして脳味噌に成長させてから、諦めて型番研究に没頭しました。

なーに。キッチンやシステムバスでやったアレをまた繰り返せばいいんだろ。わはは。かかってこい。
そして、数百ある機種の中から、換気扇や照明器具を選定し、それを安売り屋やオークションを利用してウルトラ破格で買いそろえ、電気工事に間に合わせるという奇跡の段取りを成し遂げました。

ま、実際の工事はもう少し後。とりあえずここでは図面の完成のみのご報告。
あんなに集中して覚えまくった規格や種類、型番や特徴など、今ではすっかり忘れてしまっていますけど。